導水路はいらない!愛知の会

木曽川水系連絡導水路建設計画を中止させ、木曽川・長良川・揖斐川の河川環境の保全と再生を図る。

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導水路住民訴訟:口頭弁論における提出書面と書面相互の対応関係資料

◆控訴審

2014年10月29日:第1回口頭弁論

控訴人(原告)第1準備書面(控訴理由書)  (pdf-927KB)

(要点は控訴理由補充書兼意見陳述書を参照。)

控訴人(原告)控訴理由補充書兼意見陳述書  (pdf-142KB)

(控訴理由のうち、以下の地裁判決の著しく明白な誤りを指摘。

(1) 流水の正常な機能の維持については、

@ 原裁判所は今渡地点がどこか分かっていないこと、

A 木曽川大堰下流の河川維持流量50m3/sは動植物の生息生育と漁業だけを検討して設定されたのに、景観、流水の清潔の保持、舟運も含めて多角的に検討されて設定されたと、資料を読めばすぐ分かる初歩的、基本的な誤りをしていること

  

(2) 新規利水の供給については、水需要は、実績の推移から想定値は実績とは相当乖離することになることを認めながら、

@ 需要増加のときに供給できるよう計画しなければならないとして、国の新水道ビジョンは今後の水需要は減少することを前提として水道事業を展開しなければならないとしているのを無視して誤っていること、

A 愛知用水地域の水源は牧尾ダムだけではなく、阿木川、味噌川を合わせた3ダムであり、牧尾ダムでは節水はあったが、3ダムによって地域全体の節水は回避されたのに、これを無視していること

  

(3) 判断枠組については、

@ 住民訴訟の判断の枠組について、一日校長事件最高裁第3小法廷判決の判断枠組に反していること、

A 事業からの撤退を通知した者の水道等負担金の負担・支払義務について、

a,同じ水資源開発基本計画に基づく施設である特定多目的ダム法のダムでは通知によって事業からの撤退の効果が生じ負担義務がなくなるダム使用権設定申請の取下とされており、これと同じでないと二重基準(ダブルスタンダード)となって不合理であること、

b,事業からの撤退であるの事業実施計画を変更しなければ負担を免れることはできないといっても、撤退の通知があると事業実施計画を変更しなければ工事ができないので水道等負担金は発生せず、そして、事業実施計画が変更されれば水道等負担金はなくなるので、その負担・支払義務は生じないこと)

  

被控訴人(被告)準備書面1  (pdf-531KB)

(控訴理由書の第1違法判断の枠組と第2事業からの撤退について反論。)

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2015年01月27日:第2回口頭弁論

被控訴人(被告)準備書面2  (pdf-1.7MB)

控訴人(原告)第1準備書面の@新規利水の供給とA流水の正常な機能の維持について反論。

(1)新規利水の供給について

違法判断の基準時は需給想定をしたフルプラン策定時であるとする主張に終始し、想定時の2000年実績値からこれまでの実績値(最新は2012年値)に基づけば想定値は実績値と乖離していて実績事実の基礎づけを欠くに至っている事実ついては、全く反論せず。

(2)流水の正常な機能の維持について

@今渡地点は河口から約70キロ地点にあり塩水が遡上しない地点であるにもかかわらず、原裁判所は、河口から木曽川大堰(約25q地点)までの区間における河川維持流量として必要流量の設定において、今渡地点において塩化物イオン濃度の観測が行われたと述べていて、今渡地点がどこか分かっていないということについては、今渡地点が主要な地点として木曽川の正常流量が定められていると反論するだけ。上記の原裁判所の木曽川についての初歩的理解の欠如については沈黙する。

A木曽川大堰下流の河川維持流量50m3/sは動植物の生息生育と漁業だけを検討して設定されたのに、原判決は、景観、流水の清潔の保持、舟運も含めて多角的に検討されて設定されたと、資料を読めばすぐ分かる初歩的、基本的な誤りをしていることについては、今渡地点における正常流量は上記各項目を検討していると述べるだけで、木曽川大堰下流の河川維持流量の検討については沈黙する。

Bまた、木曽川大堰下流の河川維持流量50m3/sは歴史的経緯を踏まえて定められたと述べて、動植物の生息生育と漁業の必要流量の検討は代表種としてヤマトシジミについて検討したが、ヤマトシジミの生息のために必要な流量が50m3/sであることは科学的に実証されていないことについては沈黙する。

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2015年03月12日:第3回口頭弁論

控訴人(原告)第2準備書面  (pdf-1.0MB)

被控訴人(被告)準備書面1および2に対して反論。

(1)違法判断の枠組について、丹後土地開発公社事件最高裁判決に基づいて、主張を展開(その概要と本件導水路事業についての結論は、第2準備書面要約  (pdf-125KB)を、解説は第2準備書面の解説  (pdf-85KB)を参照)。

(2)新規利水の供給と流水の正常な機能の維持については、上記被控訴人準備書面2についてのコメントのように被控訴人(被告)が沈黙していて、控訴人(原告)が上記のように指摘していることを述べる。

被控訴人(被告)準備書面3  (pdf-44KB)

控訴人(原告)第2準備書面に対しての反論。1頁で内容的なものはなし。

控訴人(原告)第2準備書面の事業からの撤退の部分に対して反論。

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2015年06月02日:第4回口頭弁論

控訴人(原告)第3準備書面  (pdf-352KB)

2013年度の愛知県の水道(水道年報)が発行されたので、最新の同年度の実績値を入れて、主張を補充。木曽川水系フルプランの目標年の2015年(データとしては後2年)となったが、愛知用水地域の水道用水は、需要実績値は基準年の2000年から減少、横ばいを続け、2015年需要想定値は実績値と乖離して過大で、そのような値にならないことが、また既存水源の近年2/20供給可能量で需要に対して供給可能であることが確実になった。

控訴人(原告)第4準備書面  (pdf-183KB)

被控訴人(被告)準備書面4に対して反論。

(1)事業からの撤退とは、水道又は工業用水道の利水者が当該施設を利用して流水を当該用途に供しようとしなくなることである(水機構法13条2項)。したがって、事業からの撤退の通知(申出)により、事業からの撤退すなわち当該施設を利用して流水を当該用途に供しようとしなくなることが決まり、当該事業は撤退部分を除いたものに縮小する。その結果、水機構は、費用負担を縮小した事業に対応するよう算出し直して、事業実施計画の費用負担を変更しなければならない。事業からの撤退の通知により、撤退通知者の事業からの撤退が決まることは、費用負担義務を定めた水機構法25条1項の「事業からの撤退をした者」との規定、事業からの撤退制度に関する立法者説明資料の「自ら発意して事業から撤退する」との説明等から明らかである。その論理的に帰結として、事業からの撤退通知者は、撤退通知によって利水者でなくなるので、利水者が負担すべき水道等負担義務がなくなる。そのことは、同じ水資源開発基本計画に基づく特定多目的ダムでは、事業からの撤退がその通知によって効果が発生するダム使用権設定申請の取下となっていること等からも明らかである。

(2)事業からの撤退がなされたときは、水道等負担金の負担義務は遡及的なくなって、納付した水道等負担金は返還される。そうすると、事業からの撤退通知の後は、返還されることが明らかな水道等負担金を支払う意味はなく、具体的な負担義務ないし支払い義務はない。

(3)事業からの撤退通知あったときは、事業からの撤退が決まって、事業が縮小するので、従前事業の工事はできす、また、事業実施計画を変更しなければ縮小事業の工事もできない。すなわち【事業からの撤退通知→事業の縮小→従前事業のための工事は事業からの撤退部分を含んでいるためできない→工事をするためには事業実施計画の変更が必要→事業実施計画が変更されなければ工事ができない→工事がされなければ費用負担金は発生しない→費用負担金が発生しないので具体的な費用負担義務は生じない】という関係になる。したがって、事業実施計画を変更しなければ費用負担義務を免れることはできないといっても、工事ができないので、従前事業の水道等負担金が発生せず、その具体的な負担義務は生じない。

被控訴人(被告)準備書面4  (pdf-1.2MB)

控訴人(原告)第2準備書面の事業からの撤退の部分に対して、情緒的、感情的な言葉を羅列して反論。

「事業からの撤退」の概念を明らかにしないまま、水道又は工業用水道の利水者が事業からの撤退をするには事業実施計画を変更しなければならない(事業実施計画が変更されない限り事業からの撤退はできない)ので、事業からの撤退通知によっては撤退の効果は生じず、事業実施計画が変更されない限り利水者の水道負担金の負担義務を負うと、繰り返し主張。

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2015年09月17日:判決言い渡し

判決全文  (pdf:1.6MB)

高裁判決の問題点(要点):弁護団長  在間  正史

1 前提行為に違法がある場合の財務会計行為の違法の判断枠組(判断枠組1)

高裁判決は、地裁判決と全く同じ内容でした。

控訴人(原告住民)は、控訴審では新たに、丹後土地開発公社事件最二判判決要旨(イ)@に基づいて、都道府県や利水者の費用負担は公法上の法律関係であり、都道府県や利水者は原因行為の本件事業実施計画の無効による費用負担義務の不存在確認の公法上の法律関係訴訟を起こすことができ、これをしないで支出することは違法であることを主張しました。

しかし、これについて、高裁判決は、控訴人の主張には摘示しながら、理由では、記載せず、判断しませんでした。

 

2 利水事業からの撤退がある場合の水道負担金支払義務(判断枠組2)

高裁判決は地裁判決と全く同じ内容でした。

控訴人(原告住民)は、「事業からの撤退通知あったときは、事業からの撤退が決まって、事業が縮小するので、従前事業の工事はできず、また、事業実施計画を変更しなければ縮小事業の工事もできない。工事がなされなければ水道等負担金は発生しない。したがって、事業実施計画を変更しなければ費用負担義務を免れることはできないといっても、工事ができないので、従前事業の水道等負担金が発生せず、その支払義務は生じない」と主張していました。

しかし、高裁判決は、この「工事ができないので、従前事業の水道等負担金が発生せず、その支払義務は生じない」との主張を、控訴人の主張として記載せず、当然、理由でも記載せず、全く判断ませんでした。

 

3 流水の正常な機能の維持のための必要性(文中の「m3」は、「立方メール」です。)

高裁判決は、ヤマトシジミは、11,600mg/Lの塩素イオン濃度に曝されても直ちに斃死しないにしても、11,200mg/Lの塩素イオン濃度で常時飼育した場合の30日後の斃死率は50%であるということを前提としながら、木曽川大堰完成後約30年間にわたって、日平均50m3/sの維持流量放流を堰操作により、ヤマトシジミの生息域における現在の汽水環境が形成されてきたという実績を考慮して河川維持流量を50m3/sに設定することについて、重要な事実の基礎を欠くということはできない、としました。

ヤマトシジミの生息のために必要な流量として求められなければならないのは、高裁判決も前提とするヤマトシジミの大量斃死が起こらない塩分濃度となる最低限度の流量(ヤマトシジミの生息のための最小限界条件)です。

木曽川大堰の取水制限流量50m3/sによって現在の汽水環境が形成されてきたということでは、木曽川大堰の取水制限流量50m3/sの下でヤマトシジミの生息に問題はなかったこと(ヤマトシジミの生息のための限界条件を上回っていたこと)はいえても、木曽川大堰放流量50m3/sがヤマトシジミの大量斃死が起こらない最低限度の必要流量であること(「堰からの放流量が50m3/s以上でなければ大量斃死が起こらない塩化物イオン濃度を満足できない」というヤマトシジミの生息のための最小限界条件)は導き出せません。

木曽川下流部の塩分濃度は、流量のほかに月齢・干満によって0〜14,000r/Lの間で絶えず変動しており、塩分濃度は、一時的に塩化物イオン濃度11,600r/L以上となっても数日のうちにはゼロになるのを含めて低下する変動をしており、塩化物イオン濃度が30日間連続で11,600mg/Lとなることはないのです。

高裁判決は、ヤマトシジミ生息のため必要な最小限度流量(必要条件だけでなく充分条件)を設定しなければならないのに、高裁判決は、これを理解できておらず、間違っているのです。

 

4 新規利水の供給のための必要性

高裁判決は、「本件フルプランの策定に先立つて実施された本件需給想定調査における愛知用水地域の水道用水の需給想定値等は、平成12年度の1日平均給水量43万6200m3/日、同1日最大給水量52万1000m3/日、1日最大取水量(河川取水地点)6.79m3/sが、 平成27年度にはそれぞれ48万9900m3/日、61万6600m3/日、8.25m3/sに揄チすると想定されている。控訴人らは、想定需要と需要実績との間に乖離があり、新規利水の必要性の根拠事実を欠いていると主張するが、 同必要性については、安全性を考慮して余裕を持った想定需要を設定して判断することも許容される。」と述べています。

愛知用水地域の水道用水の需要実績は、1日最大給水量は、2013年実績は49.13万m3であって、2000年実績50.35万m3から微減ないし横ばいです。1日最大給水量が2000年から2015年に9.56万m3・約18.3%増加、年平均で0.64万m3増加するとする愛知県需要想定は、2013年までの実績事実によって、実績と乖離しており、2015年に想定値にはならないことは明らかです。

西三河地域の水道用水は、矢作川水系の水源だけで愛知県需給想定調査の2015年需要想定値(最大)を上回っており、味噌川ダムの西三河暫定送水は必要がないので、味噌川ダムの愛知県水道用水は全てを愛知用水地域で使用できます。したがって、愛知用水地域の水道用水の徳山ダム等の安定供給水源を除いた近年2/20安定供給可能量は61.18万m3/日です。これに対して需要は、上記のように、2013年の実績最大給水量は49.13万m3で、高裁判決もいうように愛知県需給想定調査の2015年想定需要量(最大給水量)は61.66万m3/日です。

この需給比較から分かるように、徳山ダム等の安定供給水源を除いた近年2/20安定供給可能量は、2013年需要実績の1.25倍もあり、また高裁判決が安全性を考慮して余裕を持った供給にするために許容されるという愛知県需給想定調査の想定需要量とほぼ等しいのです。愛知用水地域は、徳山ダムの水がなくても、安全性を考慮した余裕を持った供給状態(供給過剰)となっており、高裁判決の論理でも、本件導水路は不要なのです。

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詳しい内容は、「名古屋高裁判決の内容と問題点」  (pdf:242KB)を参照してください。

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2015年09月30日:上告提起

上告理由書  (pdf-212KB)

(要約は、上告理由要旨を参照)  (pdf-101KB)

上告受理申立理由書  (pdf-355KB)

(要約は、上告受理申立理由要旨を参照)  (pdf-114KB)

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